技術情報
日本薬局方におけるエンドトキシン試験法
15局から16局への主な改正点
第十六改正日本薬局方エンドトキシン試験における改正点
三極薬局方検討会議(PDG)の再調和テキストに基づき、第十六改正にて「4.01エンドトキシン試験法」が施行されました。今回の改正の要点は、「国際調和テキストへの整合」、「的確かつ簡潔な記載を原則とし、調和テキストに準拠して解説的な文章を追加し、より理解しやすい記載」で、全般的に記載整備を行ったもので、試験法の本質は変更ありません。以下に、変更点を記載します。

以下、「改正点」をクリックすると、表示/非表示します。 赤字:削除箇所、青字:変更箇所
章節番号の付与
改正点
1.器具 |
2.溶液の調製 |
2.1.エンドトキシン標準原液の調製 |
2.2.エンドトキシン標準溶液の調製 |
2.3.試料溶液の調製 |
3.最大有効希釈倍率の求め方 |
4.ゲル化法 |
4.1.予備試験 |
4.1.1.ライセート試薬の表示感度確認試験 |
4.1.2.反応干渉因子試験 |
4.2.限度試験法 |
4.2.1.操作法 |
4.2.2.判定 |
4.3.定量試験法 |
4.3.1.操作法 |
4.3.2.エンドトキシン濃度の算出および判定 |
5.光学的定量法 |
5.1.比濁法 |
5.2.比色法 |
5.3.予備試験 |
5.3.1.検量線の信頼性確認試験 |
5.3.2.反応干渉因子試験 |
5.4.定量 |
5.4.1.操作法 |
5.4.2.エンドトキシン濃度の算出 |
5.4.3.判定 |
日局の先行/独自記載箇所がなくなる
「◆ ◆」の箇所;序文+7箇所
国際調和により、独自記載シンボルを示す必要がなくなった箇所。
序文
改正点
第十五改正 |
本試験法は,三薬局方での調和合意に基づき規定した試験法である.なお,三薬局方で調和されていない部分は「◆ ◆」で囲むことにより示す. |
第十六改正 |
本試験法は,三薬局方での調和合意に基づき規定した試験法である. |
2. 溶液の調製、2.1. エンドトキシン標準原液の調製
マークが外れるとともに、エンドトキシン標準品が世界保健機関の標準品で標定され、力価が国際的に統一されました。
改正点
第十五改正 |
第十五改正第一追補 |
◆エンドトキシン標準原液はエンドトキシン10000標準品又はエンドトキシン100標準品をエンドトキシン試験用水で溶解して調製する.◆ |
◆エンドトキシン標準原液はエンドトキシン標準品をエンドトキシン試験用水で溶解して調製する.◆ |
第十六改正 |
エンドトキシン標準原液はエンドトキシン標準品をエンドトキシン試験用水で溶解して調製する.エンドトキシン標準品の力価は,世界保健機関のエンドトキシン国際標準品を基準として標定される. |
2. 溶液の調製、2.3. 試料溶液の調製
医薬品容器試験に関する記載が削除されました。
改正点
第十五改正 |
◆医薬品容器の試験では,別に規定する方法に従い,試料溶液を調製する.◆ |
3. 最大有効希釈倍率の求め方
試料溶液の濃度の単位の1つとして記載されている「当量当たり(EU/mEq)」が国際調和されました。
改正点
第十五改正 |
試料溶液の濃度の単位は,エンドトキシン規格値が質量当たり(EU/mg)で規定されている場合はmg/mL,◆当量当たり(EU/mEq)で規定されている場合はmEq/mL, ◆(中略)である. |
第十六改正 |
試料溶液の濃度の単位は,エンドトキシン規格値が質量当たり(EU/mg)で規定されている場合はmg/mL,当量当たり(EU/mEq)で規定されている場合はmEq/mL, (中略)である. |
5. 光学的定量法、5.3. 予備試験、5.3.1. 検量線の信頼性確認試験
改正点
第十五改正 |
◆本試験は,ライセート試薬の各ロットにつき行う.◆ |
第十六改正 |
ライセート試薬は各ロットにつき,使用する前にその検量線の信頼性を確認しなければならない. |
5. 光学的定量法、5.3. 予備試験、5.3.2. 反応干渉因子試験
改正点
第十五改正 |
◆本試験は次の条件に適合しないとき,無効である.
1. C液で作成した検量線の相関係数の絶対値は0.980以上である.
2. D液の測定結果は,ライセート試薬に設定されている空試験の限度値を超えないか,又はエンドトキシンの検出限界未満である.◆ |
第十六改正 |
本試験は次の二つの条件に適合するとき,有効である.
1. C液で作成した検量線の相関係数の絶対値は0.980以上である.
2. D液の測定結果は,ライセート試薬に設定されている空試験の限度値を超えないか,又はエンドトキシンの検出限界未満である. |
5. 光学的定量法、5.3. 予備試験、5.3.2. 反応干渉因子試験
改正点
第十五改正 |
◆エンドトキシンの回収率が規定の範囲にないとき,試料溶液は反応干渉作用を有する.試料溶液に反応干渉作用が認められるとき,最大有効希釈倍数を超えない範囲で試料溶液を更に希釈し,試験を行う.なお,試料溶液又は最大有効希釈倍数を超えない範囲で希釈した試料溶液から反応干渉因子を除くために,ろ過,反応干渉因子の中和,透析又は加熱処理などを施すことができる.◆ |
第十六改正 |
エンドトキシンの回収率が規定の範囲にないとき,試料溶液は反応干渉作用を有する.試料溶液に反応干渉作用が認められるとき,最大有効希釈倍数を超えない範囲で試料溶液を更に希釈し,試験を行う.なお,試料溶液又は最大有効希釈倍数を超えない範囲で希釈した試料溶液から反応干渉因子を除くために,適切な処理(ろ過,反応干渉因子の中和,透析又は加熱処理など)を施すことができる. |
5. 光学的定量法、5.4. 予備試験、5.4.2. エンドトキシン濃度の算出
改正点
第十五改正 |
3. D液の結果が,ライセート試薬に設定されている空試験の限度値を超えないか,◆又はエンドトキシンの検出限界未満である.◆ |
第十六改正 |
3. D液の結果が,ライセート試薬に設定されている空試験の限度値を超えな いか,又はエンドトキシンの検出限界未満である. |
国際調和テキストの改正への対応
エンドトキシン規格値の設定式 「K/M」
「M」の定義がより詳細に記述され、単回投与、繰り返し投与、連続投与にも対応。
改正点
第十五改正 |
M は体重1kg当たり1時間内に投与する注射剤の最大量である. |
第十六改正 |
M は体重1kg当たり1回に投与される注射剤の最大量である.ただし,注射薬が頻回又は持続的に投与される場合は,Mは1時間以内に投与される注射剤の最大総量とする. |
4. ゲル化法、4.3. 定量試験法、4.3.2. エンドトキシン濃度の算出および判定
判定方法が一部修正され、第十五改正では2回試験の平均濃度で判定していたが、第十六改正では各回の評価結果で
判定することとなりました。
改正点
第十五改正 |
A液の2回の試験結果より,幾何平均エンドトキシン濃度を求める.幾何平均エンドトキシン濃度は,(1)予備試験( i )ライセート試薬の表示感度確認試験の計算式を準用して求める.(中略)A液の平均エンドトキシン濃度から,被検試料のエンドトキシンの濃度(EU/mL,EU/mg,EU/mEq又はEU/単位)を算出する.
被検試料のエンドトキシンの濃度(EU/mL,EU/mg,EU/mEq又はEU/単位)が,医薬品各条に規定されたエンドトキシン規格を満たすとき,被検試料はエンドトキシン試験に適合する |
第十六改正 |
試料溶液のエンドトキシン濃度から, 被検試料のエンドトキシン濃度(EU/mL,EU/mg,EU/mEq又はEU/単位)を算出する.
2 回の試験により被検試料について求めた二つのエンドトキシン濃度(EU/mL,EU/mg,EU/mEq又はEU/単位)のいずれもが,医薬品各条に規定されたエンドトキシン規格を満たすとき,被検試料はエンドトキシン試験に適合とする. |
5. 光学的定量法、5.3. 予備試験、5.3.2. 反応干渉因子試験
試験条件の追記があり、反応干渉因子除去処理の妥当性の検証が求められるようになりました
改正点
第十五改正 |
なお,試料溶液又は最大有効希釈倍数を超えない範囲で希釈した試料溶液から反応干渉因子を除くために,ろ過,反応干渉因子の中和,透析又は加熱処理などを施すことができる. |
第十六改正 |
なお,試料溶液又は最大有効希釈倍数を超えない範囲で希釈した試料溶液から反応干渉因子を除くために,適切な処理(ろ過,反応干渉因子の中和,透析又は加熱処理など)を施すことができる.ただし,処理によりエンドトキシンが損失しないことを保証するために,エンドトキシンを添加した試料溶液に当該の処理を施すことにより,上記の試験に適合する結果が得られることを確認する. |
記載の整備
試験薬構成表
試験薬各液の注釈が詳しく記載され、より分かりやすく記載されています。
改正点
4. ゲル化法、4.1 予備試験、4.1.2. 反応干渉因子試験、表4.01-1
液 |
エンドトキシン濃度/被添加液 |
希釈液 |
希釈倍数 |
エンドトキシン濃度 |
試験の回数 |
A*1 |
0/試料溶液 |
- |
- |
- |
4 |
B*2 |
2λ/試料溶液 |
試料溶液 |
1
2
4
8 |
2λ
1λ
0.5λ
0.25λ |
4 |
C*3 |
2λ/エンドトキシン試験用水 |
エンドトキシン試験用水 |
1
2
4
8 |
2λ
1λ
0.5λ
0.25λ |
2 |
D*4 |
0/エンドトキシン試験用水 |
- |
- |
- |
2 |
- *1 陰性対照、試料溶液のみ
- *2 反応干渉因子試験のための、標準エンドトキシンを添加した試料溶液
- *3 ライセート試薬の表示感度確認のためのエンドトキシン標準溶液
- *4 陰性対照、エンドトキシン試験用水のみ
4. ゲル化法、4.2 限度試験法、4.2.1. 操作法、表4.01-2
液 |
エンドトキシン濃度/被添加液 |
試験の回数 |
A*1 |
0/試料溶液 |
2 |
B*2 |
2λ/試料溶液 |
2 |
C*3 |
2λ/エンドトキシン試験用水 |
2 |
D*4 |
0/エンドトキシン試験用水 |
2 |
- *1 限度試験のための試料溶液、最大有効希釈倍数を超えない範囲で希釈することができる
- *2 陽性対照、A液と同倍数で希釈された試料溶液で、終濃度2λとなるように標準エンドトキシンを添加したもの
- *3 陽性対照、濃度2λのエンドトキシン標準溶液
- *4 陰性対照、エンドトキシン試験用水のみ
4. ゲル化法、4.3 定量試験法、4.3.1. 操作方法、表4.01-3
液 |
エンドトキシン濃度/被添加液 |
希釈液 |
希釈倍数 |
エンドトキシン濃度 |
試験の回数 |
A*1 |
0/試料溶液 |
エンドトキシン試験用水 |
1
2
4
8 |
-
-
-
- |
2 |
B*2 |
2λ/試料溶液 |
- |
1 |
2λ |
2 |
C*3 |
2λ/エンドトキシン試験用水 |
エンドトキシン試験用水 |
1
2
4
8 |
2λ
1λ
0.5λ
0.25λ |
2 |
D*4 |
0/エンドトキシン試験用水 |
- |
- |
- |
2 |
- *1 定量試験のための試料溶液、段階希釈倍数は、最大有効希釈倍数を超えない範囲で適宜変更することができる
- *2 陽性対照、A液の最小希釈倍数と同倍数で希釈された試料溶液に、終濃度2λとなるように標準エンドトキシンを添加したもの
- *3 ライセート試薬の表示感度確認のためのエンドトキシン標準溶液
- *4 陰性対照、エンドトキシン試験用水のみ
5. 光学的定量法、5.3. 予備試験、5.3.2. 反応干渉因子試験、表4.01-4
液 |
エンドトキシン濃度 |
被添加液 |
試験管またはウェルの数 |
A*1 |
0 |
試料溶液 |
2以上 |
B*2 |
検量線の中点濃度*2 |
試料溶液 |
2以上 |
C*3 |
3濃度以上 |
エンドトキシン試験用水 |
各濃度、 2以上 |
D*4 |
0 |
エンドトキシン試験用水 |
2以上 |
- *1 試料溶液のみ(試料溶液のエンドトキシン濃度測定用).最大有効希釈倍数を超えない範囲で希釈することができる。
- *2 A液と同倍数で希釈された試料溶液で,検量線の中点または中点付近のエンドトキシン濃度になるように標準エンドトキシンを添加したもの。
- *3 検量線の信頼性確認で用いた各種濃度のエンドトキシン標準溶液(検量線作成用)。
- *4 陰性対照.エンドトキシン試験用水のみ。
2. 溶液の調製、2.3. 試料溶液の調製
pH調整試液の事前確認が必要となりました。
改正点
第十五改正 |
pHの調整に用いる試液又は溶液はエンドトキシン試験用水を用いて調製し,エンドトキシンが検出されない容器に保存する. |
第十六改正 |
pHの調整に用いる試液又は溶液はエンドトキシン試験用水を用いて調製し,エンドトキシンが検出されない容器に保存する.これらの試液又は溶液は,エンドトキシンが検出されないこと,及び反応干渉因子を含まないことが保証されたものでなければならない. |
4. ゲル化法、4.1. 予備試験、4.1.1. ライセート試薬の表示感度確認試験
求めた幾何平均エンドポイント濃度がλではなく、0.5~2λの範囲の場合でも、あくまで使用している試薬の表示感度が
λである。すなわち、試薬の表示感度が0.05EU/mLの場合には、λは0.05EU/mLとして試験する。
改正点
第十五改正 |
求めた幾何平均エンドトキシン濃度が0.5~2λの範囲にあるとき,ライセート試薬の表示感度は確認されたことになる. |
第十六改正 |
求めた幾何平均エンドトキシン濃度が0.5~2λの範囲にあるとき,ライセート試薬の表示感度は確認されたと判定し,以下の試験にはその表示感度を用いる. |
5. 光学的定量法、5.3. 予備試験、5.3.1. 検量線の信頼性確認試験
ライセート試薬は、ロット毎、使用する前に信頼性確認試験を実施する必要があります。
改正点
第十五改正 |
◆本試験は,ライセート試薬の各ロットにつき行う.◆(中略)
作成した検量線の相関係数 r を求めるとき,その絶対値|r|が0.980以上であることを確認する. |
第十六改正 |
ライセート試薬は各ロットにつき,使用する前にその検量線の信頼性を確認しなければならない.(中略)
作成した検量線の相関係数 r を求め,その絶対値|r|が0.980以上であるとき,検量線の信頼性は確認されたと判定する. |
5. 光学的定量法、5.4. 定量、5.4.2. エンドトキシン濃度の算出
改正点
第十五改正 |
ただし,次のすべての条件に適合しないとき,試験は無効である. |
第十六改正 |
本試験は次のすべての条件に適合するとき,有効である. |
日局の「医薬品の試験に用いる水」の記載変更に伴う変更
9.41. 試薬・試液;エンドトキシン試験用水
通則20日局の「医薬品の試験に用いる水」の記載に変更があり、それに伴う記載の変更
改正点
第十五改正 |
医薬品各条,「注射用水」又はその他の方法により製造した水で,エンドトキシン試験に用いるライセート試薬の検出限界で反応を示さないもの. |
第十六改正 |
医薬品各条の「注射用水」若しくは「注射用水(容器入り)」又はその他の水で,エンドトキシン試験に用いるライセート試薬の検出限界以上の濃度のエンドトキシンを含まず,エンドトキシン試験を行うのに適したもの. |
参考;通則20の変更
改正点
第十五改正 |
医薬品の試験に用いる水は,別に規定するもののほか,「精製水」とする |
第十六改正 |
医薬品等の試験に用いる水は,試験を妨害する物質を含まないなど,試験を行うのに適した水とする. |